街の木コレクション

樹木医が街で出会った木を紹介。木で遊び食べ楽しむブログ

樹木医的?クイズ 葉っぱは大事だよ

今日はクイズですが、宣伝させてください。小さい方の「樹の手帳」が重版(4刷)となりました。3月末に見直したのですが、コロナのおかげでようやくです。大きい方も絶賛発売中です。中身はほぼ一緒で(大きい方は巻頭に春夏秋冬の木のグラビアがついています)、大きさに関わらず同じ値段です。

小さいほうが持ち運びしやすいので、人気です。でも字が小さいです。

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 アマゾン↓

https://www.amazon.co.jp/樹の手帳-散歩が楽しくなる-岩谷-美苗/dp/448781068X/ref=olp_product_details?ie=UTF8&me=&qid=1589850379&sr=8-2

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他書籍 細々と販売しております。ぽちっとしていただけると幸いです。

 

 「街の木ウォッチング」は樹種がわからなくても形の意味がわかる本で、「樹の手帳」は笑いながら樹種を覚えてもらおうと思った本。「子どもと木であそぶ」は、今の時期にぴったり?「子どもにこれやったら、喜ぶぞー」と、親とかおじいちゃんおばあちゃん、同業者に使ってもらえたらいいなと作った本です。

 

んで、

第一問

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ヒント 裏をかかないで、第一印象で答えて下さい。

 

 

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これは見たまんまで正解です。葉が多い方が元気そうで、葉が少ない方が元気なさげです。専門家でなくても「元気なさそうだな」という感覚は、だいたいあってます。

 

解説

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木は、葉がないことには生きていけません。みなさんはごはんを食べないと生きていけないですよね。そのごはんを木は葉っぱで作って得ています。葉で光合成することが収入とすれば、花を咲かせたり実をつくったり、呼吸したりするのは支出です。(ちなみに「光合成」という言葉は最近は中2で出てきます。)

木は必要な葉を出しているので、無駄な葉は出しません。よく植木屋さんが枝を切って(剪定)手入れするのは、大きさを抑制するためです。もしくは見栄えのため。(枯れ枝を切るのは木にも利益があります)。小さな庭でどんどん大きくなったら、こまりますよね。

また、林業で下枝を切るのは、枝があると加工しにくい材になるので、「枝打ち」をしているのです。この辺よく混同されますが、生きている枝を切られて喜ぶ木はいないと思うんですよねー

木はある程度大きくなったら、実をつけます。ただ毎年実をたくさんつけることはありません。木は長生きできるので、そんなに急がなくてもいいのです。木は枯れる前に大量に実をつけることもあります。(実をつける体力も残ってない木はそのまま枯れます)

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果樹などは、剪定をして「やばいよー」と木を焦らせて、毎年実をつけさせます。ぬくぬく育てると毎年実をつけてくれません(脅しすぎはダメですが)。
ただ、同じ樹種なのに、何もしないのに毎年たくさん実をつける木がいたり、イイ感じで脅しているのに、どうしても実をつけないという木もいます。そういうタチとしか言いようのない例もあります。

 

さて、第2問です。

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左は針葉樹で、20cmぐらいの幅の樹皮をぐるりと剥かれています。

右は、中が完全に空っぽの木です。

 

 

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左のぐるりと樹皮を取られた木が枯れます。樹皮の内側は、木が生きる上でなくてはならない大切な部分なのです。

反対に空洞でも回りと葉さえあれば、太くなることもできます。ただ、折れるというリスクがあります。

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ほとんどの人は、「根から栄養を吸い、上に持っていく」しかイメージを持ってないのですが、第一問の葉で作っているごはん(糖など)は、葉からざっくり下へ運ばれます。この上から下へのイメージを持ってもらえれば、すごく木の状態がわかるようになります。根からは体を形づくる無機養分、葉からは養分が得られます。

 

木の材で生きている細胞は、形成層、篩部組織と放射組織で、まんなかの色が変わっている心材部分は、死んだ細胞で、ほぼ使われません。皮の内側の形成層や篩部組織をぐるりと取られてしまうと、上からの養分が下へ運ばれなくなり、枯れてしまうのです。

下からの水も新しい年輪の導管を使う木が多いので、新しい年輪も削られてしまうと水がはこべなくなります。(ケヤキなどは新しい年輪の導管しか使いません)

 

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ただ、広葉樹の場合(↑オニグルミ)はもう一つの生きた部分、放射組織から

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樹皮を作ることもあります。(この写真で「なんてかわいそうなことをするんだ!」と怒られたことがあるんですが、この木は切らないといけない木だったので、実験したのでした。6月皮をむき、8月再生でした。)

針葉樹はそういうことができないので、林業では「まきがらし」と言って、木が立ったまま枯らし、下草が一気に生えない作業方法もあります。

 

あと、空洞になっちゃう木についてですが、「ちゃんと塗布剤を塗らないからだ」というのはちょっと違いまして、

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完全に殺菌すると強すぎて、木のほうが参ってしまいます。なので、塗布剤は万能ではないのです。また、菌類の本体の菌糸が内側にいる場合は、外を塗ってもキノコは出てきます。

じゃあどうすんの?と言われると、

そもそも木には菌類を封じ込める機能があって、

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導管、年輪、放射組織、形成層で菌を封じ込めるバリアーを作ることができます。

でも、見た感じ、形成層のみで止めている木が多いですね。

だから、

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葉をまったく残さない。こんな切り方をすると、切った時点の形成層で封じ込めるので、それまでの材は放棄しちゃいます。

なのでこんな断幹したら、そこは腐るの確定。腐るのは10-20年後ですが、長い長い時限爆弾のスイッチを押したようなものです。太くなってバッサリ切るのは、いろいろやっかいなのです。

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これはイチョウですが、この穴の太さの時に、枝分かれした高さで切られたんだと思います。

解説なんだか、横道なんだか、長くてすいません。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。